一帖の和紙がさらりと広がる。 微かな鈴の音とともに墨の香りが漂い、いつの間にか鈴の式神が姿を現した。 紙に記された暦を指でなぞりながら、静かに語り始める。
🔔 鈴の式神: 「皆さま、ようこそお越しくださいました。 今日は、一年の移ろいを一枚の紙に書き留めた『月別の行事表』をご用意いたしました。
古より伝わる四季折々の営み。 その一端を、月ごとに紐解いてまいります。 気になる季節を訪ね、昔の人々が込めた願いに触れてみてくださいませ。
一年を共にする道しるべとして、どうぞお手元にお留めください。」
【一月(睦月)】
🔔 鈴の式神: 「新しい光が差し込む一月。親しき仲で睦まじく過ごすこの月は、何事もまっさらな気持ちで始められる特別な時間でございますね。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 元日(お正月) | 1月1日 | 年神様をお迎えし、一年の幸福を授かる最も大切な行事。 |
| 人日の節句 | 1月7日 | 「七草粥」を食べて邪気を払い、無病息災を祈ります。 |
| 鏡開き | 1月11日 | 年神様が宿っていた鏡餅を下げ、お雑煮などで頂く行事。 |
| 小正月 | 1月15日 | 豊作祈願や左義長(どんと焼き)を行い、正月を締めくくります。 |
【二月(如月)】
🔔 鈴の式神: 「まだ寒さは厳しい折ですが、衣を更に着る『衣更着(きさらぎ)』が由来とも。春を待つ静かな熱気が、土の下で芽吹こうとしております。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 節分 | 2月3日頃 | 豆をまいて邪気を払い、福を呼び込みます。 |
| 立春 | 2月4日頃 | 二十四節気の始まり。暦の上ではこの日から春です。 |
| 初午 | 2月最初の午の日 | 稲荷神社で、五穀豊穣や家内安全を祈願する日。 |
| 針供養 | 2月8日 | 折れた針を豆腐に刺して供養し、裁縫の上達を願います。 |
【三月(弥生)】
🔔 鈴の式神: 「草木がいよいよ生い茂る弥生。雛飾りの華やかさと共に、冬の眠りから覚めた命たちが一斉に呼吸を始める季節でございます。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 上巳の節句(ひな祭り) | 3月3日 | 「桃の節句」。雛人形を飾り、お子さまの健やかな成長を願います。 |
| 春彼岸 | 春分の日前後 | 先祖を敬い、故人を偲ぶ一週間。中日にはおはぎを供えます。 |
| 春分 | 3月21日頃 | 昼夜の長さがほぼ同じになり、自然を称え生物をいつくしむ日。 |
【四月(卯月)】
🔔 鈴の式神: 「卯の花が咲き乱れる月。新しい出会いや門出に、桜の花びらが優しく背中を押してくれるようでございますね。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 灌仏会(花まつり) | 4月8日 | お釈迦さまの誕生をお祝いし、甘茶をかける風習があります。 |
| 十三参り | 4月13日 | 数えで13歳の節目に、知恵と健康を授かるため参拝します。 |
| 清明 | 4月5日頃 | 万物が清らかに、生き生きと輝き始める季節です。 |
【五月(皐月)】
🔔 鈴の式神: 「早苗を植える『早苗月(さなえづき)』が転じた五月。薫風が吹き抜け、生命のエネルギーが最も瑞々しく溢れる時でございます。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 八十八夜 | 5月2日頃 | 立春から88日目。この頃に摘んだお茶は縁起が良いとされます。 |
| 端午の節句 | 5月5日 | 「菖蒲の節句」。兜を飾り、柏餅を食べて成長を祝います。 |
| 母の日 | 5月第2日曜 | 日頃の感謝を込めて、カーネーションなどを贈ります。 |
【六月(水無月)】
🔔 鈴の式神: 「田に水を引く月。しとしとと降る雨は、大地を潤し、半年間の汚れを洗い流してくれる浄化の雫でもございます。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 衣替え | 6月1日 | 衣服を夏物へと入れ替える、平安時代からの習慣。 |
| 入梅 | 6月11日頃 | 暦の上での梅雨入り。農家にとって大切な水の恵みの時期。 |
| 夏越の祓 | 6月30日 | 茅の輪くぐりを行い、半年間の穢れを払い清めます。 |
【七月(文月)】
🔔 鈴の式神: 「短冊に文(ふみ)を認める文月。夜空に広がる天の川に、大切な想いを馳せてみてはいかがでしょうか。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 七夕 | 7月7日 | 笹に願いを書いた短冊を飾る五節句の一つ。 |
| 暑中見舞い | 7月上旬〜 | 厳しい暑さの中、相手の健康を気遣う便りを出します。 |
| 土用の丑の日 | 7月下旬頃 | 「う」の付くものを食べ、夏バテを防ぐ習慣。 |
【八月(葉月)】
🔔 鈴の式神: 「木々の葉が落ち始める季節の入り口。暑さの中にも、ふとした瞬間に秋の気配が混ざり込む、不思議な時を刻む月でございます。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 立秋 | 8月7日頃 | 暦の上では秋の始まり。これ以降は「残暑見舞い」となります。 |
| お盆(中元) | 8月15日頃 | ご先祖様の精霊をお迎えし、家族で供養する行事。 |
| 五山送り火 | 8月16日 | お盆にお迎えした精霊を、再びあの世へ送り出す行事。 |
【九月(長月)】
🔔 鈴の式神: 「夜がしだいに長くなる長月。秋の夜長に筆を走らせたり、名月を眺めたりと、心穏やかに過ごすには最適の季節ですね。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 重陽の節句 | 9月9日 | 「菊の節句」。菊酒を飲み、不老長寿を願う五節句の締め。 |
| 中秋の名月 | 旧暦8月15日 | 収穫に感謝し、月を愛でるお月見の行事。 |
| 秋彼岸 | 秋分の日前後 | 春と同じく先祖を供養します。この時期は「おはぎ(御萩)」です。 |
【十月(神無月)】
🔔 鈴の式神: 「八百万の神々が出雲に集われる月。神々が留守の間、私たちは身近な実りに感謝し、来る冬に備えて心を整えてまいりましょう。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 十三夜 | 旧暦9月13日 | 「後(の)の月」。栗や豆を供えるため、栗名月とも呼ばれます。 |
| 神嘗祭 | 10月17日 | その年の新穀を伊勢神宮に供え、感謝を捧げる大切な儀式。 |
| 恵比寿講 | 10月20日 | 商売繁盛の神・恵比寿様を祀り、一年の無事を感謝します。 |
【十一月(霜月)】
🔔 鈴の式神: 「霜が降り、冬の気配が色濃くなる霜月。収穫を祝い、生命の恵みに感謝する祈りの声が各地で響き渡ります。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 七五三 | 11月15日 | 子供の健やかな成長を氏神様に感謝し、お祝いする行事。 |
| 新嘗祭 | 11月23日 | 天皇陛下が新穀を神に供え、自らも食して収穫を感謝する日。 |
| 酉の市 | 11月の酉の日 | 縁起物の「熊手」を買い、商売繁盛や開運を願います。 |
【十二月(師走)】
🔔 鈴の式神: 「師も走るほどに慌ただしい十二月。一年の締めくくりとして、大切な方やご自身へ『ありがとう』を伝える月でもございます。」
| 行事名 | 目安の日付 | 行事内容・由来 |
| 正月事始め | 12月13日 | 煤払い(大掃除)など、お正月の準備を始める日。 |
| 冬至 | 12月22日頃 | 一年で最も夜が長い日。南瓜を食べ、柚子湯に入ります。 |
| 大晦日 | 12月31日 | 年越しそばを食べ、除夜の鐘を聞きながら新年を待ちます。 |
🔔 鈴の式神:「時折この暦を眺めて、『今はこういう季節なのだな』と想いを馳せる。そんな心のゆとりが、皆さまの日々を美しく輝かせてくれると願っています。」
参考文献・資料
本記事の作成にあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。
- 神宮館編集部 編『暮らしを楽しむ 日本の伝統行事』(神宮館)
- 竹永 絵里 著/小川 直之 監修『はじめての行事えほん』(パイインターナショナル)
- 新谷 尚紀 監修『季節の行事と日本のしきたり事典ミニ』(マイナビ文庫)
- 飯倉 晴武 監修『絵と文で味わう 日本人のしきたり』(PHP研究所)
- さとう ひろみ 著『大切にしたい、にっぽんの暮らし。』(サンクチュアリ出版)
- 新谷 尚紀 監修『おうちで楽しむ 季節の行事と日本のしきたり』(日本文芸社)
- 三浦 康子 著『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)
- 本間 美加子 著『春夏秋冬 ゆる〜く楽しむ和の行事』(主婦の友社)
- クレア 編著『親子でまなぶ 季節行事とマナーの基本』(マイナビ文庫)
- 広田 千悦子 著『にほんの行事と四季のしつらい ビジュアル版・くらし歳時記12か月』(集英社)
- 齋藤 孝 著『齋藤孝の覚えておきたい 日本の行事』(PHP研究所)

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